お仁の一期一筆

第三十一筆「ピンピンコロリ」

アルファベットの三文字略語に接する機会が増えている。TPPは環太平洋経済連携協定の略語。遡れば戦後のどさくさ時代に最初に入ってきたのが、若い人が知っているバーべキューのBBQではなくGHQである。

ジープに乗って東京の街を走り回っていた米国の進駐軍、総司令部のことである。この進駐軍が持ち込んだのが、レンタル店で借りるDVDとは違うシラミ退治の殺虫剤DDT。その後は教育現場のPTA、国内総生産のGDP、新しいところではAKBといったアイドルグループにも使われている。

年配者が知るアイドル集団は松竹歌劇団のSKDだろうが、中高年の人たちの最近の関心事は「ピンピンコロリ」のPPKではないだろうか。元気に長生きし、病まずにコロリと逝きたい。ちなみに寝たきり状態を続け亡くなる「ネンネンコロリ」のNNKは願い下げだ。PPKは誰もが思う願望である。

長寿県・長野の下伊那郡高森町で北沢豊治氏が一九八三年、日本体育学会に「ピンピンコロリ運動について」と題して発表したのが始まりと言われている。

お出かけ頻度が高い。お酒を毎日飲む。かかりつけの歯科医がいる。コレステロール値は高め。財布は自分が握る。自分は健康だと思う。首都大学東京の星旦二・大学院教授の著書「ピンピンコロリの法則」(ワニブックスPLUS新書)にもあったPPKの秘訣。

PPKは我が人生の宿望。特に、適量のお酒を毎日たしなむ男性は長生きするという。ふっふっふ、である。日頃の我が心掛けの正しさに乾杯!だ。

第三十二筆「ハロウィーン」

スパイダーマンがいる。ドラキュラも、ゾンビもいる…。古代ケルトが起源で、秋の収穫を祝い悪霊を追い出すための祭りハロウィーン。先月末、国内各地では仮装を楽しむ若者たちの〝ハロウィーン騒動〟が、今年も繰り広げられた。

ハッピーハロウィーン!我が職場のある東京・渋谷で人気ゲームのキャラクターに扮した本番を待ちきれない若者に前日夕方、声を掛けられ咄嗟にハイタッチをしてしまった。「我が姿が仮装と思われたのだろうか…」。内心複雑な心境ではあったが、若者との一瞬の関わりに胸の泉が満たされた。

誰もが抱く変身願望。若者は仮装したことで、自分という枠から解放されていたのだろう。本来は、普段の街中でもこうした光景が当たり前の日常であってほしい。ふと、そう思った。

ハロウィーンの決まり文句は「トリック・オア・トリート」(お菓子をくれないと、いたずらしちゃうぞ)。齢を重ねてもいたずら心は失いたくない。咄嗟の若者とのハイタッチも、そんな我に少し残っていた、いたずら心だったのかもしれない。

今思えば、我も何度も変身を繰返してきたのである。乳児だった我と今の我の外見はまったく違う。幼児の時とも違う。少年の時とも、青年の時とも違う。老いれば、また変身である。どう変身していくのだろうか。楽しみでもある。

ただ外見の大きな変身に比べ自信がないのが内面的な成長。齢にふさわしい〈いのちの質〉の確立。仏法でいう菩薩の境涯こそが我が理想だが、道は遥か遠しである。精進したい。

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