お仁の一期一筆

第二十九筆「年齢もいろいろ」

女優の吉永小百合さんが、もう若くないという感じを抱いたのは、涙が真っすぐ流れないで横に走ったときだという。横に走る涙。女優ならではの表現に感心した覚えがある。

今月は我の誕生月。間もなく年齢が一つ加わる。もちろん満年齢での話だ。日常使う年齢を、〈数え年〉から満年齢に替える法律が施行されたのは一九五〇年(昭和二五)。

数え年は、生まれた時点で一歳とし、正月を迎えると一つ年を加える仕組み。大晦日に生まれると翌日には、もう二歳になる年齢の数え方である。我は法律施行の翌年の生まれだが、数え年の習慣は暫く残り、元日に数え年の数だけ餅を食べさせられた幼い頃の記憶もある。

明治期から年齢は満で計算するという法律があった。ただ、なかなか浸透せず、海外の統計と足並を揃える目的などもあって、改めて満年齢を法制化した。国民をごっそり若返らせた〝若返り法〟である。国民への心理的効果は大きかったと想像する。

満年齢の導入で実年齢は動かし難くなったことも背景にあるのだろう。最近は血管年齢や骨年齢、体力年齢などさまざまな年齢が登場している。測定結果に一喜一憂する時代である。そういう我も顔の老人性イボやほくろをとり、美肌年齢を若干、回復したばかりだ。

残る課題は、沈思黙考できる脳年齢の維持と瑞々しい精神年齢の維持。人生の年輪を重ねるごとに、心がいよいよ若さを増していくのが理想である。横に走る涙は、ある種の肉体的な機能低下によるものだろう。「まあ、いいか」である。

第三十筆「機動戦士ガンダム」

都内のどこかに「ガンダム特区」をつくり、実物大のガンダムやザク、ドムなどの人型兵器「モビルスーツ」が歩き回る。二〇二〇年の東京オリンピックではトーチリレーをする。そんな驚きの構想まであるという。

一九七九年にテレビで放送が始まり、全国に一大ブームを巻き起こしたテレビアニメ「機動戦士ガンダム」の話である。週刊誌「日経ビジネス」の特集で知った。

宇宙に進出した人類と、地球に住む人類との戦いを描くガンダムは、現実的要素のあるSFをモチーフに主人公アムロ・レイらを通してリアルな人間の心理をも深く探求する物語シリーズ。

誕生から三十六年たったが、ガンダムのプラモデル、通称ガンプラの年間出荷数は海外向けを含め一一〇〇万個にのぼるほか、イベントなどのコラボ企画を含む市場規模も昨年度だけでも一〇〇〇億円と言われ、ガンダムビジネスは衰え知らずだ。

同誌の特集では、トヨタ自動車がなぜ、ガンダムをイメージしたクルマを出すのか、なぜ日本のモノづくりとマーケティングに深く影響を及ぼしているのかなど多面的に取り上げているが、企業経営の反面教師となる内容や部下の育成などにも役立つ物語性にも切り込んでいる。

現実社会にも十分通じるガンダムシリーズの物語。社会とは理不尽の塊りであるという現実を、ガンダムを通して何度も疑似体験してきた四十五歳前後の人たちが、最もハマっているという。我もガンプラを手始めに、想像力の宝庫であるガンダムの世界に入門したい衝動にかられてきた。

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