お仁の一期一筆

第十五筆「手強い感染症」

韓国でのMERS(中東呼吸器症候群)コロナウイルス感染拡大が止らない。我が国も韓国からの帰国者や入国者への水際対策に万全を期しているが、日本国内で発症しないという保障はない。手強い存在である。

感染症では昨年、首都圏でヒトスジシマカが媒介するデング熱の感染が約七十年ぶりに確認され、その拡大に翻弄された。西アフリカを中心にエボラ出血熱が猛威を振るったのも記憶に新しい。そして今、警戒を要するのがマダニが媒介するSFTS(重症熱性血小板減少症候群)だという。

蚊の次はダニである。SFTSは、二〇一一年に中国で初めて報告されたウイルス感染症。国内での初感染は二〇一三年で、今年五月までの感染者数は百二十二人という。特効薬はなく、感染すると高熱、嘔吐、下痢、下血症状のほか血小板や白血球などの血液細胞減少などで重症化すると命にもかかわるという。

マダニは日本全国に生息し、五~九月が活動期。主に放牧地の家畜などにとりつきSFTSなどのウイルスを媒介することで知られている。

また、これからの時期はウイルス感染だけではなく、食中毒や熱中症にも細心の注意が必要だ。手洗いはもちろんだが、食べ物には熱を加え、熱中症予防には水分と塩分のこまめな補給も欠かせない。

ただ、ウイルス感染症も食中毒や熱中症も日頃の体調管理が<最後の砦>。抵抗力が弱まる要因は疲労と不摂生といわれる。健康の智慧が問われる時代。超熱燗による我が体内除菌実験の成果も問われそうだ??

第十六筆「和のセンスで涼」

水打ちした庭。縁側には浴衣姿でうちわで涼をとる家人。風鈴の音とお香の香りが心地よい。節電、エコの時代。昔ながらの道具や知恵を取り入れ、夏を涼しく、心地よく、五感を大切にした日本の夏の風情。うちわのやさしい風が今、見直されつつあるようだ。

うちわの歴史は古い。古代中国やエジプトの壁画にも描かれている。日本に伝わったのは飛鳥時代で、軽くて丈夫な竹と紙が広く使われるようになったのは、室町時代といわれる。

ただ、真夏の外出に重宝しているのは、うちわではなく扇子。バッグに一つ扇子をしのばせている。顔のあたりをあおぐだけで、とても涼しげな気分になるから不思議である。

うちわは中国から渡ってきたが、折り畳みができる扇子は日本で発明されたと言われている。骨が少なく、シンプルな江戸扇子と何本もの細い骨が繊細で雅な京扇子が代表的だが、親骨と中骨にあけた小さな穴を金属で留めて開閉自在とした日本の技には、感心するばかりだ。

扇子は広げると<八の字>のような形となることから<末広がり>に通じ、扇子そのものを<末広>とも言う。縁起がよいことから、この時期に転勤が決まった人には、お祝いの贈り物としてよく使ってきた。

<扇子はセンスのよい贈り物>なのである。黒方、梅花、荷葉、菊花、侍従、落葉。平安時代から<六種の薫物>と言われる煉香の代表的な和の名香。夏の香りである荷葉などが扇子に焚き込まれていれば申し分なしである。この夏は和のセンスで涼を楽しみたい。  

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